「副え」を揃えよう

「おもぎ」を迎え入れたら、次は「副え(そえ)」を揃えましょう。「副え」は「おもぎ」の雰囲気を受け継ぎ、より高めてくれる植物です。「おもぎ」の醸し出す雰囲気を壊さないように、葉っぱの形や厚みなどを選びましょう。「副え」には「おもぎ」の雰囲気と同じ雰囲気のものを揃えても良いですが、「陰陽」の概念を導入して、柔らかい雰囲気の「おもぎ」に堅い雰囲気の「副え」を加えてみるなどすると、雰囲気にメリハリが生まれてより楽しくなります。

お気に入りの「おもぎ」を見つけることが出来たら、今度は「おもぎ」の周りを彩る「副え」を揃えましょう。「副え」には「おもぎ」の雰囲気を補強する役割がありますが、一方で「副え」間違えると「おもぎ」の雰囲気を台無しにしてしまうことがあります。「副え」選びもまた「おもぎ」選びと同じように、とても大切なプロセスなのです。闇雲に「副え」を集めるのではなく、全体の雰囲気を壊さないように、ある程度の方針を持って揃えていくと良いでしょう。

一番簡単な方針は、「おもぎ」と全く同じ種類の植物だけを「副え」として集めることです。例えば、南国リゾートを思い浮かべてみてください。最も南国リゾート風の風景は、青い空、青い海、美しい砂浜に椰子の木が植わっていると思います。椰子の木以外の木があったら、南国リゾートの雰囲気が半減してしまいます。つまり、椰子の木が南国リゾートの雰囲気を生み出す源であり、それを集めることによって雰囲気がより強く感じられるようになっていくのです。

また、もう少し工夫をして、雰囲気や葉っぱの形や厚みなどが似ている植物を「副え」として迎えてもよいでしょう。植物には、種が異なっていても葉っぱや樹形の非常に似ている種類のものがたくさんあります。いつも「おもぎ」を心に留めておき、その雰囲気とマッチする植物を見つけたら、その都度迎え入れてあげましょう。そうしていくうちに、いつの間にか「おもぎ」の雰囲気でまとまった感じのあるお部屋になることでしょう。

さて、このようにして同じ種類や雰囲気の植物を集めていくと、まとまった感じは出ますが、「おもぎ」によってはメリハリがなくのっぺりした雰囲気になってしまうこともあります。そこで、もうひとつの方針として、「陰陽」の概念を用いた集め方をするとよいでしょう。「陰陽」とは、相反するが2つセットで初めて両方が存在しうるという組み合わせの概念です。植物に当てはめると、葉っぱが丸い・鋭い、光沢がある・艶消し、肉厚・ペラペラ、色が濃い・薄い、背丈が高い・低い、樹形が直線的・曲線的、などの組み合わせが考えられます。

庭師さんの世界では、「男木(おんき)」と「女木(めんき)」という考え方があるそうです。黒松のようなカッチリとした剛毅な感じのある木は「男木」、モミジのような柔らかい感じのある木は「女木」と呼ばれます。「おもぎ」には「男木」「女木」どちらを選んでもよいのですが、それだけではつまらないので、「副え」として相反するほうの木もどこかに植えることによって陰陽の強弱を演出し、情緒にあふれる庭にするということです。

お部屋の植物選びにも、この考え方はとても参考になります。自分で決めた「おもぎ」の雰囲気が「男木」なのか「女木」なのかを判断しておき、雰囲気にメリハリが欲しい時はもう一方の雰囲気のものを探してみると良いでしょう。

このように、「副え」選びで一番大切なものは、その場の気分次第で集めていくのではなく、いつも「おもぎ」の雰囲気を憶えておき、それにマッチするようなものを選んでいくという落ち着いた心なのです。

参考資料
佐野藤右衛門 著(1999)「木と語る」小学館