脳に優しい緑色

緑色は目に優しい色といわれます。緑色と目の関係には、木々の葉の色が緑色なために見ていると気分的に落ち着くとか、緑色を眺めていると視力が回復するなどのいろいろな話がありますが、実は、緑色の光は人間の目にとって最も労力を使わずに感じることのできる波長の光のため、刺激が少ないのだそうです。なので、緑色は「目に優しい色」というよりは「脳に優しい色」といったほうがしっくりくるのかも知れません。

私達が目にする「色」とは、物にあたって吸収されずに反射してきた波長の光を目で捉えて脳が判断したものです。人間の目に見える光は「可視光線」とも呼ばれ、波長の短いものは青、中くらいのものは緑、長いものは赤い色に見えます。青い光の波長は450~485 nm(ナノメートル、10億分の1メートル。)、緑の光の波長は500~565 nm、赤い光の波長は625~740 nmとなっています。

人間の目はこれらの光の色を「錐体細胞」と呼ばれる細胞で感知しています。錐体細胞には、青の波長を最も感じる「青錐体」、緑の波長を最も感じる「緑錐体」、緑と赤の中間くらいの波長を最も感じる「赤錐体」の3種類があります。また、色は分からないものの明るさを敏感に感知する「桿体細胞」と呼ばれる細胞もあり、これらの4種類の細胞の反応度合いの組み合わせによって脳が色や明るさを判断しています。

このように、光を感知する目の細胞には同じ光に対しても種類によって得手不得手があるわけですが、全体の組み合わせで最も感じ取りやすい色は何色でしょうか?

それが、緑色なのです。難しく言うと、人間の目は明るい場所では555 nmくらい、暗い場所では507 nmくらいの光を最も強く感じ取れるのだそうです。藍、青、緑、黄、赤と順番に見せていくと一番明るく見える色が緑色付近の色なのだそうです。555 nmの光と言われてもいまいちピンと来ませんが、だいたいこんな色です→

一番明るく見えるということは、それだけ脳にとっても感じ取りやすく、脳が一生懸命に頑張らなくても色を判断できるわけです。そのため、緑色は脳に負担をかけにくく、リラックスできたり他のことに集中できたりするのだそうです。なので、緑色は「目に優しい色」というよりは「脳に優しい色」といったほうがしっくりくるのかも知れません。

楓の森林森林の中へ行くと気持ちが穏やかになったり、じっくり物事を考えることができる気分になりますが、こうしたことも緑色という脳に優しい色のおかげもあるのかもしれません。鮮やかに咲く花や燃えるような紅葉も魅惑的に見えて良い面もありますが、脳が光を判断しようと一生懸命に働いているのです。常日頃からこうした色に囲まれていれば、脳により負担をかけつづけることになってしまいます。やはり普段目にするには落ち着く緑色が一番です。

私達が普段、部屋の中で目にする色は何色が多いでしょうか。白い壁紙、黒い電子機器、茶色い机…。ほとんどが白・黒・茶の3色が多いのではないのでしょうか。これらの色は清潔に見えたりスタイリッシュに見えたりして一見よさそうにも思えますが、脳にとっては緑色に比べて常にストレスがかかり続けているのではないでしょうか。

部屋は見せ物ではなく、人が暮らしたり仕事をしたりする大切な空間です。その空間が騒々しいよりも穏やかであるほうがずっと良いことは間違いありません。部屋の中も脳に優しい緑色、出来れば自然な緑色でいっぱいにすると、気持ちが穏やかになったり集中力が増したりして、生活の質も向上するかもしれません。